ミノーを作るために
ハンドメイドゆえのばらつきもあり、なかなか確証を持った情報ともいえないですが、 私が色々と作る中で確認した事をまとめておきたいと思います。おおむねまとめた通りの挙動になると思います。
また、最下段には私が普段作っているミノーの型紙も載せているので、何もわからないという方は参考にしてみて下さい。
作り方はこちらに記載しています。
ボディの形状
最初に大きさですが、小さいほど(4cmや、3㎝台など)、しっかり泳ぐ物を作るのが難しくなります。小さなボディの中に オモリの部分と、浮力が発生する部分を明確に区分けするのが難しくなってくるからだと思います。
小さくするには上下方向に大きくしたり、重みを集中させやすい、できるだけ高比重のオモリ(タングステン)を入れる事がコツだと思います。 はやり市販品にも多いように5cm位が目安の一つになると思います。
そして、形ですが、こればかりは色々な形が存在するので、整理してまとめる事は難しいですよね・・・。皆さん色々な発想で作っていると思います。
一つ分かりやすい特徴としては、フラットタイプの形と、丸っこい形でしょうか。
左側が丸みがあるタイプで、右側がフラットタイプです。フラットタイプは厚みがない分、横方向からの浮力の影響が少なく、 シンプルに上下方向でバランス(腹側のオモリと、背側のバルサの浮力)が取れるからだと思うのですが、 良く動く安定したミノーが作りやすいように感じます。オモリの配置にも依りますが、動きにはメリハリがあり、面で光を反射するからか、 引いてくる時も良く目立ち、アピール力が高いように思います。
また、この形は作りやすいというメリットもあります。曲面が少ないので、切り出した木材は、角を落とす程度にやすり掛けするだけなので、 毎回同じ形に手早く仕上げられます。加えて、塗装する人は関係ないですが、私のフィルムを貼る作り方だと、曲面が少ないので、 フィルムも貼りやすいです。
形は、高さ、丸みなどいろいろな要素があり、作りながら試してもらうしかないかと思います。 ただ、渓流で使い勝手を良くするためには、強い水流でも安定させるため、 高さ方向の厚みをある程度持たせ、上方向の浮力を確保し、オモリはなるべく下方配置して、 低重心、高浮力にしたほうが安定して使えると思います。
特に初めて作る人は、クルクル倒れたりせず、使えるものを作る事が先決だと思いますので、 この方向性が良いと思います。一回作れてしまえば、それをベースに不安定性を持たせたり、工夫してみると面白いです。
まずはいろいろ作りながらとなると思いますが、一番大切なのは、型紙の形状、オモリ位置、 フック位置など記録を残す事です。 もし良い感じの物ができたとしても、完成後は中身や、どう作ったのか分からなくなってしまいます。
オモリの配置
オモリの種類
オモリは、タングステン、鉛、鉄(ステンレス)の3種類が、普通に入手できる物だと思います。
比重を調べて並べてみましたが、タングステンは、昔ながらのオモリである鉛より、さらに重く、1.7倍くらいの重みがありますね。
比重が大きいということは、同じ重さのオモリを仕込むにしても、小さくできることになります。 小さくできるということは、重みが分散せず、上下方向であればより低重心に、水平方向であればボディ中心に重みを集中させる事もできます。
(水平方向のオモリ配置については、おもりを集中させるのも分散させるのも、動きの質が変わるのであって、 どちらもアリなので集中できる事が常にメリットになる訳では無いと思いますが。この辺の事は、下の方にも書いてます。)
渓流用ミノーはボディが小さく配置の制約が大きいですが、その中でも配置の自由度が上がる事、 また、オモリの容積が小さくなってバルサの領域が増えることで、キビキビした動きを出しやすくなることから、 タングステンを使うのが良いと思います。
(ただ、これはオモリの影響だけを考えた場合であって、動きには他の要因もあるし、鉛もそこそこ重いので、当然ですが鉛でもきちんと動くルアーは作れます。)
オモリの重心位置
ルアー内部に配置するオモリの重心位置とルアーへの影響について、まとめてみました。
実際に作ってみた結果で書いていますが、オモリ以外の影響があったりして、 ひょっとしたら何かおかしいところもあるかもしれませんが、参考にはなると思います。
<水平方向>
オモリの水平方向の中心をどこに置くかです。前寄りに配置すると動きが小さく、後ろ寄りに配置すると動きが大きくなります。 オモリの中心位置が1mmくらい変わると動きも変わり始め、2mmくらい動かすと明確に変わります。 調整は、これ位の調整幅を目安に少しずつ動かした方が良いです。
また、動きの他に、キャスト時の飛行姿勢と(前過ぎると変な姿勢になって飛びにくい)、 水中で止めた時の沈下姿勢(尾から沈むか、水平に沈むか)にも影響します。
<垂直方向>
オモリの垂直方向の中心をどこに置くかです。 上方向に中心があると不安定で、ひっくり返ったりします。オモリは、できる限り低い位置に置いて安定させた方がよいと思います。
<おもりの広がり>
配置するオモリの広がりです。重心位置が同じで、オモリの重さが同じでも、広がり具合で動きが変化します。
例えば、同じ重量のオモリ玉を2個入れるとして、その2個を密接して入れるのと、距離を離して入れるのでは、2つの玉の中心位置が同じでも 動きが変わってきます。
集中して配置すると、パタパタとON/OFFのはっきりとしたヒラウチをする動きになります。(頭と尾を振るような感じ、ウォブリング強め?)
広げて配置すると、ヌルヌルとした魚が泳いでいるような自然な動きになります。(ローリング強め?)
リップの取り付け角度
リップの取り付け角度は、私の場合、45°で差し込んでいます。(横から見た、だいたいの角度です。)一番無難と思います。
市販のミノーを見てもわかると思いますが、寝せるほど深く潜り、立てる程潜らなくなります。(ディープダイバーなどは、かなり水平に近いですよね。) リップに受けた力は、下方向(垂直方向)とボディ側(水平方向)への力に分散されますが、 寝せるほど下方向への配分が大きくなって深く潜り、立てるほど下方向への配分は小さくなって潜らなくなります。
逆にボディ側へ配分される力は、寝せた場合は小さくなり、立てた場合は大きくなってアクションに寄与してきます。
まとめると、寝せると深く潜るがミノーアクションは小さくなり、立てると潜らないがミノーアクションは大きくなるはずです。 (他にも色々な要素があるので何とも言えないですが、水流からリップに受ける力のみを考えるとこうなります。)
またアクション以外に、水嚙みも変わってきます。寝ている方が、確かに良く潜るのですが、水嚙みは悪くなり、潜り始めが遅くなります。とくに重量が軽いと良くないです。 そして、立て過ぎの場合は、そもそも潜らないので、水を噛まないという問題が出てきます。 ルアー重量との兼ね合いも大きいですが、汎用的に使うルアーについては、やはり適度な角度(45°くらい)が良いのだなと私は思っています。 (市販ミノーによくあるディープダイバーのタイプは、リップが寝ていますが、重い重量と大きなリップのおかげで、水嚙みの悪さも解消されているのでしょう。)
フロントアイの向き
フロントアイの取り付け向きについてです。水平状態から下側へアイを傾けると動きが大きく変化していきます。
コーティング回数
コーティング回数とは、最後に行っているセルロースセメントでのディッピング回数です。
コーティング回数を多くして、外側の層を厚くすると、動きが大味に変化します。
ヒラヒラとした泳ぎの振れ幅が大きくなる代わり、その振れ回数が少なくなります。(大きく、緩慢に動く方向に変化)
たくさんコーティングする方が丈夫になりますが、あまり重ねすぎるとハイピッチでのヒラヒラが損なわれていきます。
私の場合は6回を基本としていて、倍の12回にすると明らかに変わります。
(コーティング回数は、使うセルロースセメントによって違うので参考です。)
データ紹介
型紙
参考に普段作っているミノーの型紙を載せておきます。画像データを見ると何てことない絵ですが、一応何十個も作った結果の配置図です。
この画像のデータ(こちら)
そのままのサイズでA4の紙に印刷すれば、5㎝ミノーの絵が印刷できます。 オモリ配置する時の重心位置、腹部フックの取り付け位置も記入してあるので、 その部分に合わせてオモリを入れ、フックを付ければ問題なく泳ぐミノーができると思います。 オモリは、2g程度入れれば、3.5gくらいのシンキングミノーになります。 調整したい時は、下のほうに書いているオモリの配置位置などが参考になると思います。
また、リップの絵も実際のサイズで一緒に載せてあります。
特に、これから始めてみようという場合など、これをベースとして使ってもらえればと思います。
作り方の手順などは、こちらにまとめています。⇒作り方
カラーリング用画像
このサイトで紹介している作り方では、塗装無しで、フィルムを貼って仕上げるので、 フィルム用のカラー画像データも載せておきます。これもそのままのサイズで、A4サイズのフィルムに 印刷すると、5cmミノーにちょうどいい大きさのカラーフィルムができます。 好みのカラーを作れば、手軽に色々な色が作れます。
フィルム用カラー画像のファイルはこちら